桜町晶 | 「ここが私のうちです」
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| 晶と正司は桜町家の前にいた。
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正 司 | 「・・・見事な木造建築だなあ」
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桜町晶 | 「私のうち建築の仕事で儲かっているからこんなでかい家建てることが出来たんだ」
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正 司 | 「そうか・・・」
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桜町晶 | 「じゃあ入ろ」
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正 司 | 「あ、ああ・・・」
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| 玄関の戸を開ける。
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| 玄関の先には晶の父が立っていた。
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大 作 | 「あきら〜〜〜」
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| いきなり晶に抱きつく。
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桜町晶 | 「ちょ、ちょっとお父さん」
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大 作 | 「父さんは心配したぞぉおお〜〜」
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| ややあきれながら見つめる正司。
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桜町晶 | 「お父さん!!!」
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| 父から離れる晶。
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桜町晶 | 「お父さん、この人・・・」
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大 作 | 「貴様かーーーむすめをこんなに夜更かしさせたのは!!!!」
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| 大作の拳は正司に向かって突き進む。
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| 正司は大作の拳を片手で受け止める。
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正 司 | 「・・・」
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桜町晶 | 「お父さん!このひとは・・・」
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| 夜更かしの原因を詳細に事細かく説明する。
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大 作 | 「なあ〜んだ娘を助けてくれたのか、これは失礼」
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| 正司に抱擁しながらわびる大作。
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桜町晶 | 「で、この人しばらく家に泊めてもいい?行くあてがないから」
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大 作 | 「う〜〜ん、そうだないま職人が不足してるから大工の仕事を手伝ってくれると言うならい
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| いぞ」
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正 司 | 「力仕事ならまかせてください」
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大 作 | 「おお、若いもんは物わかりがいいねえ、ちゃんと飯もつけてあげるぞ」
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桜町晶 | 「じゃあお話はここでおしまい、私の部屋に泊めるね」
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大 作 | 「いっ?」
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| 正司の背中を強引に押して二階の自分の部屋に向かう。
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大 作 | 「あ、晶〜」
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部下A | 「どうしたんですか親方?」
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部下B | 「晶嬢帰ってきたんですか?」
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大 作 | 「男を連れ込んだ・・・」
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A・B | 「ええええええええええええええええええ!!!」
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| こちら晶の部屋。
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| いかにも女性の部屋という感じの装飾である。
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正 司 | 「いきなり部屋にまで強引だなあ」
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桜町晶 | 「さ〜昔のお話聞かせて!」
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| 床に正司用の布団を引きながら話し掛ける。
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正 司 | 「ききたいか、昔のこと?」
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桜町晶 | 「うん」
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| 正司は自分の布団に入り、そして静かに語りだした。
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正 司 | 「俺はこの町の孤児だった、戦争で両親を亡くし・・・」
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| 長々と話を続ける。
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桜町晶 | 「そんな事じゃなくて、恋の話聞かせて」
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正 司 | 「恋か・・・そういえばあの人はどうしているのかな・・・」
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桜町晶 | 「あの人?恋人がいたの?」
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正 司 | 「いやただの知り合いだ、それにその人にはすでに婚約者がいた」
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桜町晶 | 「ふ〜ん、一方的な片思い(ニヤリ)」
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正 司 | 「そうでもなかったかもな」
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桜町晶 | 「どういうこと?」
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正 司 | 「彼女には婚約者がいたがそれはうわべだけのものだった。彼女は借金の肩代わりに差し出
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| されたようなものだ」
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桜町晶 | 「可哀想」
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正 司 | 「俺が眠りにつく数時間前、彼女と約束した」
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桜町晶 | 「約束?」
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正 司 | 「俺が戦争から帰ってきたら俺と・・・」
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桜町晶 | 「俺と?」
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正 司 | 「忘れた」
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桜町晶 | 「はい?」
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正 司 | 「もうこれ以上は勘弁してくれ」
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桜町晶 | 「ええ〜、そういえばそれから五十年ほど経ってるっていうならもう死んでるかも」
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正 司 | 「かもしれないな」
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桜町晶 | 「だったら私とつきあお〜よ」
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正 司 | 「冗談はやめてくれよ」
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桜町晶 | 「冗談じゃないよ、本気だよ、あのときびびっときたんだもん」
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正 司 | 「びび?っと」
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桜町晶 | 「そうそう、だから」
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正 司 | 「そうだな、新しい生活のために気分転換にいいかもな」
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桜町晶 | 「あ〜私はただの気分転換?」
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正 司 | 「ごめんごめん、言葉のあやだよ」
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桜町晶 | 「う〜」
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| と、話は夜中延々と続く。
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| そしていつの間にか晶は眠りに落ちる。
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正 司 | 「・・・この子も変わった子だ・・・」
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| 晶の寝顔を見ながらあきれる正司。
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正 司 | 「さてこれからどうしようか・・・」
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| 失った五十年の再構築、そして昔の仲間・・・。
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正 司 | 「明日、あの場所に行ってみよう・・・」
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