大 作 | 「おーい、兄ちゃん一つ頼むわ」
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| 桜町組は今、仕事で家を建てている。
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三 枝 | 「俺にも一つ」
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葉 月 | 「あ、俺も」
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| シュキーーーン!!!
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| 三人の方へ氷がとんでいった。
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大 作 | 「かーー、夏はやっぱり氷に限る」
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正 司 | 「・・・」
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| 妙な力を持ち合わせているものの、仲間内ではこの力は評判である。
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正 司 | 「親方、そろそろ昼飯にしませんか?」
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大 作 | 「そうだな、よしみんなひと休みするぞ」
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| 大工業が板についてきた正司。
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三 枝 | 「正司さんなれてきましたね」
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大 作 | 「ああ、鍛えればものになるぞ」
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葉 月 | 「娘さんとの関係はどうなんです?」
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大 作 | 「・・・まだ娘に結婚は早い、ましてや同居など・・・しかし、これ以上娘に嫌われたくな
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| いし・・・」
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三 枝 | 「大変ですねえ〜」
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| 親の心配は尽きない大作。
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正 司 | 「親方」
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大 作 | 「なんじゃい?」
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正 司 | 「少しよりたいところがあるので昼以降の仕事を休ませてください」
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大 作 | 「ああ、今の仕事は急ぎではないからいいが、何用じゃい?」
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正 司 | 「私用です」
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| そういって正司は仕事場をあとにした。
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| 正司は黒崎沙織が住む家に向かった。
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正 司 | 「すいません、黒崎沙織さんはいますか?」
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執 事 | 「御嬢様にどういったご用でしょうか?」
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正 司 | 「黒崎英司さんに引き合わせていただきたいのですが」
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執 事 | 「ご主人様なら現在この地にはおりません、日本の各所に出かけております」
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正 司 | 「そうですか・・・」
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執 事 | 「申し訳ありませ・・・お、御嬢様」
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沙 織 | 「山崎さんですか、お久しぶりです」
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正 司 | 「先日どうも」
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沙 織 | 「いえ、玄関前でお話も何ですから家に入ってください、じい案内お願いします」
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執 事 | 「はは、わかりました」
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| 執事は正司を屋敷の中へ案内する。
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| 黒崎家はこの村ではかなり大きな屋敷に住んでいる。
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| そのうえ沙織の祖父は現在は会長職にいるがやり手の事業家、
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| 長男は県議員、長女は聖神学園の校長兼理事長、次男が弁護士と・・・
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沙 織 | 「お久しぶりです、わざわざ来ていただいたのに御爺様にお会いしていただくことが出来な
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| くて申し訳ありません」
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正 司 | 「いえ、こちらこそいきなり押し掛けて」
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沙 織 | 「桜町さんから聞いたのですが、山崎さんは桜町さんと同棲しているのですか?」
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正 司 | 「いや、その、ただしばらく寝泊まりしているところを借りているだけですよ」
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沙 織 | 「やっぱりそうですか、昔から桜町さんは大袈裟な発言が多かったもので」
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正 司 | 「そうですね」
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| 二人笑いあう。
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正 司 | 「しかし、今日は英司さんにお会いすることが用件でしたのでここらで帰ります」
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沙 織 | 「え、もう少しよろしいのでわ?」
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正 司 | 「???」
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沙 織 | 「その・・・私も・・・あなたのことをお慕いしております」
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正 司 | 「・・・えっと」
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| 沙織は正司の胸にはいる。
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正 司 | 「い、いけませんよ・・・」
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沙 織 | 「桜町さんと私、どちらが良いですか?」
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正 司 | 「あああ・・・そういうこと聞かれても・・・」
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神 那 | 「沙織、入りますよ」
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| いきなり沙織の祖母神那が入ってきた。
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沙 織 | 「お、御婆様」
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| 正司から咄嗟(とっさ)に離れる。
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神 那 | 「こういうところを娘に見られたら何を言われるかわかりませんよ」
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沙 織 | 「で、でも・・・」
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神 那 | 「それにあなたも孫とつきあいを軽々しく思わないでください」
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正 司 | 「神那・・・変わったな・・・」
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神 那 | 「なんです目上の人に対して呼び捨てを・・・」
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正 司 | 「俺を覚えていないのか?神那、五十年前・・・」
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神 那 | 「五十年前・・・・・・・・・・・・・・・えっ??????」
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正 司 | 「俺だよ、山崎正司だよ」
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神 那 | 「えっ、あっ・・・・・・そんな、正司さんは死んだはず・・・」
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正 司 | 「五十年間地下で凍りづけにされていたんだよ」
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神 那 | 「ま、まさか・・・でもあのときのまんま・・・」
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沙 織 | 「・・・どういうこと?」
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正 司 | 「・・・今日の所は帰るよ」
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神 那 | 「後日連絡いたします、あの人には今日のことは言いません、沙織も秘密にしておくのです
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| よ、宜しいですね」
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沙 織 | 「う、うん・・・」
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| 正司は黒崎家をあとにする。
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| 神那は自分の部屋に戻りふさぎ込む。
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神 那 | 「・・・私は取り返しのつかないことをしてしまった・・・・・・あの人との約束を・・・」
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| ひとり部屋で大粒の涙を流し続ける。
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| 正司は黒崎家から帰る途中、桜町晶に出会う。
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桜町晶 | 「どこへ行っていたの?昼から仕事休んだりして」
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正 司 | 「黒崎家へ行っていた」
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桜町晶 | 「あ〜沙織さんを口説きにでも行っていたの???」
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正 司 | 「ちがうって」
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桜町晶 | 「嘘、もう私のこと飽きたんでしょ」
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正 司 | 「何でそうなるんだよ」
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桜町晶 | 「もー怒ったもん」
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正 司 | 「・・・あのなあ〜」
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| 突如晶を抱きしめる。
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桜町晶 | 「えっ???正司さんこんなに大胆だったっけ???」
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正 司 | 「し、静かに」
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| 二人の近くにいつの間にか黒づくめの男達が数人立っていた。
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桜町晶 | 「あ、あの・・・」
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正 司 | 「俺から離れるな」
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桜町晶 | 「う、うん・・・」
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正 司 | 「誰の差し金だ」
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黒 一 | 「・・・・・・」
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黒 二 | 「死ね」
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| 黒づくめの男達は一斉に正司に襲いかかった。
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| 正司は晶を抱えつつ素早く避けまくる。
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正 司 | 「いつまでも避けきれないか・・・」
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| 正司は両手から凍れる冷気を結集させる。
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| そして襲いかかってきた男達に氷をぶつける。
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| 男達は全員氷漬けとなる。
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| 二人はすぐさまその場から立ち去った。
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| 男達は何者かは分からず終い(じまい)・・・
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