| 十年前・・・
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| とある空港にて、
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母 親 | 「いい加減にしてください、あなたとはもう離婚して会わないと言ったはずです」
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父 親 | 「ま、まて私の話を聞いてくれ・・・」
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母 親 | 「あなたにはもうついては行けません、実家に帰ります」
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父 親 | 「まってくれー、XXX(娘の名前、らららの本名)に会わせてくれ」
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母 親 | 「あなたとあの子はもう関係ありません、はなしてください」
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父 親 | 「し、静江・・・・・・」
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娘 | 「おかあさん、どうしておとうさんといっしょにいちゃだめなの?」
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静 江 | 「XXX、お父さんとはこれから別々に暮らすの」
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娘 | 「どうして、どうして」
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静 江 | 「XXX、飛行機の時間だからもう行くわよ」
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娘 | 「あっ・・・おとうさん」
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父 親 | 「静江・・・XXX」
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| 母親は娘を連れて父親の元を去っていった。
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| 飛行機に乗り込むまで娘は母親の前で泣きじゃくっていた。
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娘 | 「どうして・・・しくしく」
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| 座席に座ってからも泣きじゃくっていた。
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静 江 | 「XXX、母さんはちょっとトイレに行って来るから大人しくしているのよ」
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娘 | 「・・・しくしく」
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| XXXが泣いていたところ、隣の席に座っていた少年がXXXの髪の毛をつついてきた。
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亮 太 | 「おい、なにないているんだ?かなしいことでもあったのか?」
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娘 | 「しくしく、だれ?」
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亮 太 | 「桜部亮太だ、いまからりょこうにいくんだ」
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娘 | 「・・・りょこう・・・わたしは、おとうさんとわかれたの」
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亮 太 | 「わかれた?」
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娘 | 「りこんしたの・・・しくしく」
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亮 太 | 「・・・げんきだせよ、おれといっしょにあそぼうぜ」
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娘 | 「・・・・・・」
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亮 太 | 「さーいくぞ」
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| 亮太は娘の手を取って飛行機の前の方へと進んでいた。
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亮太父 | 「おい、亮太、あんまり人様に迷惑かけるな」
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亮太母 | 「亮太、もう少ししたら飛行機が動くから早く帰ってくるのよ」
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亮 太 | 「わかってるよ」
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| 亮太と娘は操縦室前まで走ってきた。
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亮 太 | 「ここのへやにはいろう」
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スチュ | 「僕、ここは今から忙しくなるから席に戻っていて」
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亮 太 | 「え〜〜」
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スチュ | 「かわりにこの人形あげるから」
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亮 太 | 「え〜こんなへんてこなにんぎょういらないよ」
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スチュ | 「でも、そっちの子は欲しいみたいよ」
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娘 | 「・・・・・・」
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亮 太 | 「こんなへんてこなのがいいのか?」
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娘 | 「テレビでやっていたにんぎょう・・・」
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亮 太 | 「わかったよ、じゃあ・・・ちょっとトイレ」
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娘 | 「わたしも・・・」
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| そういえばいつのまに娘の顔から涙は消えていた。
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| トイレ前に到着。
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亮 太 | 「さて・・・あれ?」
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| ズキューン、ズキューン!
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| 突如飛行機無いにおいて銃声が響いた。
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ハイ1 | 「おらーーー!!!この飛行機をハイジャックした!!!」
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ハイ2 | 「てめえらおとなしくしろ!!!」
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| 複数のハイジャック犯が飛行機内において叫んだ。
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| そして、飛行機はハイジャック犯の指示のまま飛行機は南から北へと進路変更された。
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| 亮太と娘は咄嗟(とっさ)にトイレに隠れた。
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娘 | 「・・・わたしこわい・・・・・・」
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亮 太 | 「ああ、おれもこわいよ・・・なにがおこったんだ・・・・・・」
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娘 | 「おかあさん、おとうさん・・・しくしく」
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亮 太 | 「な、なくなよ・・・おれも、なきたくなるよ・・・・」
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娘 | 「いっしょにいてね、どこにもいかないでね、もうかなしいこといやだよ」
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亮 太 | 「ああ、どこにもいかないよ、どこにも・・・おれがついているよ」
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| そして運命の時は訪れる。
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| 飛行機は北へと進む予定が、途中燃料切れをおこして機長がハイジャック犯に給油すべき
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| だと進言したが、ハイジャック犯は聞き入れずそのまま強行したため東北の山中へと突入
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| した。
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ハイ1 | 「くそおおおおおお」
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ハイ2 | 「兄貴どうしよう・・・」
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ハイ1 | 「知るかあーーー!!」
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| ズキューン
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| ハイジャック犯のはなった銃弾は一人のハイジャック犯に打ち込まれた。
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| 即死だった。
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機 長 | 「うわあーーーーーーぶつかるーーーー」
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| 飛行機は山の林の中に激突した。
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| バキドカガスドカボキズドベキグホゲキ・・・
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客 | 「キャーーーーー(オワーーーーー)」
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| あっという間の出来事であった。
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| そして一瞬のうちに乗客の半分以上はこのときの衝突で即死した。
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| 苦しみという感覚を味わうことなく・・・
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亮 太 | 「ううう・・・」
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娘 | 「・・・・・・」
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| 亮太と娘はトイレの中にあった備品がクッションになったのかかろうじて息はしていた。
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亮 太 | 「ううぅぅ、うでが・・・・」
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| 亮太の体はなんとか軽傷ですんだものの両腕は無惨にも完全骨折をおこしていた。
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亮 太 | 「あ、そうだ、おい、だいじょうぶか、おい!」
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| 亮太の声は娘には届いていなかった。
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| かろうじて息はしているものの頭や体のいたるところを強打したため虫の息状態だった。
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亮 太 | 「う・・・」
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| 亮太は娘を背中に背負い、固くしまっていたトイレのドアをこじ開けて外にでた。
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| 外は炎が発生しており窒息状態となっていた。
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| 座席に座っていた人は座ったまま動かない状態で、炎を浴びていた。
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亮 太 | 「とうさん、かあさん・・・」
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| 父と母の心配をするも、今は脱出することが先決。
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| そして、脱出と同時にあちこちで爆発が発生、火炎の渦となって燃え広がり、まわりの木
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| 々も燃え始めた。
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| 亮太は娘とともにその場から離れた。
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| そして見晴らしのいい丘まで到着して、一時休憩。
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亮 太 | 「おい、めをさませよ・・・まだなまえもきいてないだろ・・・」
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娘 | 「・・・・・・」
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| 折れた腕で顔に触れる。
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| そんなやりとりをしている間にレスキューや警察等が到着。
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| 亮太と娘は無事保護され、病院に入った。
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| そして十日後・・・。
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亮 太 | 「あっ・・・ここは・・・」
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| 病院のベットにてようやく目をさました。
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亮太父 | 「おお、ようやく目を覚ましたか・・・」
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亮 太 | 「と、とうさん」
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| 亮太の父も反対側のベットに寝ていた。
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亮 太 | 「とうさん、おかあさんは?」
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亮太父 | 「まだ目を開けない・・・命だけは助かったがな・・・」
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亮 太 | 「かあさん、だいじょうぶかな」
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亮太父 | 「ああ、命は大丈夫だって医者が言っていたよ」
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亮 太 | 「そう・・・あれ」
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| 亮太は両腕を見た。両腕は完全に折れる前の形にもどっていた。
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亮 太 | 「うでが・・・」
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亮太父 | 「世界的に実績のある桂木文貴先生が治療してくれたんだよ・・・」
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亮 太 | 「そういえば、あのこは・・・」
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亮太父 | 「あの子?」
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亮 太 | 「いっしょにいたこ」
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亮太父 | 「病院には運ばれたと思う」
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亮 太 | 「・・・・・・そう」
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| 父とのやりとりをしていたところ澄子おばさんとほたる登場。
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澄 子 | 「おや、気がついたの?」
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亮 太 | 「あ、澄子おばさん」
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澄 子 | 「それにしてもあんたら親子は飛行機事故にあってよく命があったもんだ・・・」
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亮太父 | 「おい、澄子!」
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澄 子 | 「あ、わるいわるい、でも本当に命があって良かったよ・・・義姉さんも」
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亮太父 | 「ああ・・・」
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| ほたるは亮太の飛びつく。
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ほたる | 「おにいちゃん、しんぱいしたんだからね・・・ほたる、ほたる・・・うるうる」
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亮 太 | 「ほたる、なくなよ・・・」
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| ほたるが亮太に抱きついて泣いているさなか亮太はあの子が心配だった・・・。
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| 飛行機で知り合った子、のちに再会することになるあの子。
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| 病院では悲しみの中の喜びのさなか、とある病院の一室にて。
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文 貴 | 「・・・XXX、静江・・・・・・」
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| 娘と別れた妻の死体の前で立ちつくしていた。
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文 貴 | 「わたしは、これから一体何をすれば・・・・・・」
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| 全身にふるわせながら大粒の涙をこぼした。
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文 貴 | 「いや、なんとしてもこの手で生き返らす、なんとしても・・・・・・」
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| 次の日、桂木文貴とその元妻と娘の体とともに姿を消した。
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| 十年後・・・
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| とある屋敷の地下にて
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文 貴 | 「ようやく・・・ようやく・・・」
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| 長い年月をかけて治療し続けて、ようやく神の領域を侵した。
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娘 | 「りょ・う・た・・・・・・」
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文 貴 | 「おおおおぉぉぉぉ、遂に遂に・・・」
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| 死から生を見いだした瞬間であった。
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