ららら/丗伍話

美人薄命

四 月「サトリ、行くわよ」
サトリ「はい、四月様・・・」
    雑賀四月と里瀬サトリは港病院に向かっていた。
    里瀬サトリは四月の一つ後輩で、常に四月に付き従っている忠実な部下である。
    なぜ港病院に向かっているかというと、四月は五月に会いに行くためである。
    五月は今、亮太の見舞いにひっきりなしに病院にいる毎日である。
    ゆえに雑賀家には現在あまりいないのである。
    なぜ四月は五月に会いに行くのかというと、四月は五月との蟠り(わだかまり)を拭い去
    る(ぬぐいさる)ためである。
    過去にこんな事があった・・・
    約十年前・・・
栢ばあ「四月お嬢さん、いけませんそんな刃物なんか持ち出して・・・」
四 月「ばあやは黙ってて、五月はいつも私とは違って可愛がられてばかり、あんたなんか死んで
    しまえば良いんだ!」
五 月「や、やめて四月お姉ちゃん・・・」
四 月「死ねえーーー!!!」
    ズシャッ・・・
睦 月「ううわああ・・・」
    喧嘩を止めに入った兄の睦月の目に大きな傷がうまれる。
五 月「お、おにいちゃん・・・」
四 月「あ、あああ・・・」
睦 月「だ、大丈夫だ・・・単なるかすり傷・・・」
    のちその傷が元で睦月は片目を失う。
    四月は五月との恨みよりも兄を傷つけたことに酷く落ち込みむ。
    両親も四月を一時親戚の家に預けることとなった。
    四月と五月はそれ以来会っていない。
    そして・・・
五 月「大丈夫亮太」
亮 太「・・・何度思いだそうとしても君のことがわからないよ・・・」
五 月「そ、そうか・・・まあ急がずに治療に専念しましょ」
亮 太「あ、ああ・・・」
ららら「マスタ〜思い出そうよ」
五 月「無理に思い出そうとして帰って悪くなったら駄目でしょ」
ららら「そっかなあ〜」
    和気藹々と話し合う三人。
    五月は亮太のために買ってきた林檎を切るために病院から果物包丁を借りようと一旦部屋
    から出る。
    すると出てすぐの所に四月とサトリが立っていた。
五 月「もしかして四月姉さん?」
四 月「久しぶりね五月」
五 月「え、ええ、でもなんでここに?」
四 月「家で待っていてもなかなかあえないから直接出向いてきたのよ」
五 月「そっか・・・」
四 月「あのとき言えなかったことを言いたかった・・・御免なさい」
五 月「ね、ねえさん・・・」
    深々と頭を下げる四月。
サトリ「・・・・・・」
四 月「さて五月、あなたにもう一つ言っておきたいことがあったの」
五 月「なんです姉さん?」
四 月「私は近々正式に親戚の家に養子には行って姓が変わることになるの」
五 月「そ、そうなんですか」
四 月「ええ、だからそうなればもう私は雑賀の人間ではなくなるは、だかららその前にあなたと
    正々堂々と勝負がしたいの」
五 月「勝負・・・」
四 月「ええ、あなたの雑賀流武術と私の雑賀流裏武術で・・・」
五 月「でもなぜ戦うの・・・?」
四 月「あのときの罪をせいさんしたのよ、お願いできる」
五 月「・・・・・・わかりました、では後日」
四 月「楽しみにしているわ」
    四月とサトリは病院から去っていく。
サトリ「・・・」
四 月「どうしたのサトリ?」
サトリ「・・・四月様、あの程度の人なら私でも勝てそうです」
四 月「そう、じゃあ私が戦う前にあなたが挑戦してみたら」
サトリ「はい・・・」
    いまいち戦う理由が見えてこないような気がしないでもないが、いずれ先が見えるであろ
    う・・・。
    いずれ・・・
    そして・・・
亮 太「・・・腹が減った・・・」
ららら「遅いねえ五月さん」
亮 太「まったく・・・」
五 月「御免なさい、今すぐに切るから」
ららら「まってました」
五 月「はいはい」
    林檎を切って亮太とらららに差し出す。
    一方病院に向かって自転車をこぐ桜部ほたるがいた。
ほたる「ふふふ〜ん〜お兄ちゃんに会いに行く〜」
    鼻歌混じりに歌いながら自転車に乗っているほたる。
サトリ「ほたる、久しぶり」
ほたる「??????」
サトリ「わからない、里瀬サトリよ」
ほたる「???」
サトリ「覚えてないの?小学校一緒だったでしょ」
ほたる「あああああああ〜サトリちゃんね」
    しばらく二人は話し込む。
サトリ「またここに引っ越してきたからよろしくね」
ほたる「うん、また一緒に遊ぼうね」
サトリ「そうね、またいつか・・・・・・」
    二人は別れる。
サトリ「ほたるちゃん、昔の私はもういないのよ・・・」
    少し悲しげに言葉を出す。
    そして背後から四月が現れる。
四 月「さあ、家に帰りましょ」
サトリ「ええ、四月様・・・」
    四月はいまサトリとともにアパートを借りて暮らしている。
    サトリは親族を事故でなくして孤児(みなしご)になっていたところ、四月が手を差しの
    べて今日に至る。
四 月「サトリ、私にはもう時間がないの・・・」
サトリ「はい、わかっています」
四 月「残された時間のあいだに全てを終わらせなければ・・・」
サトリ「その為に私がいます。私の一生は四月様に託しましたから」
四 月「ありがとう・・・目眩がしてきたからサトリおんぶしてね」
サトリ「はいはい♪」
    サトリは四月を背負ってアパートに向かった。

あとがき「ゲスト・四月」
ITK「今回の話はちょっとわけが分かりませんが、一応四月は余命僅かという事です」
四 月「その余命僅かの間に私は何をしようとしているの?」
ITK「幼い頃の蟠り(わだかまり)の決別、そして五月との最後の戦い」
四 月「そんだけ・・・?」
ITK「そういうこと」
四 月「じゃあ最後になるかもしれませんからITKさんを・・・」
ITK「えっ???」
四 月「あちょ〜!!!」
    ものの見事に昇天したITKであった・・・。

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