| 一人孤立する少年。
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| クラスの誰からも相手にされず、また相手にせず、ただじっと大人しく学校のベランダを
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| 見続ける毎日。ある日をきっかけに人と接するのを嫌になる。そして今日に至る。
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| そんな光景を一人の少女は心配そうに見つめていた。
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| 彼女の名は姫野忍、どことなく不思議な面持ちをもつ少女。
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| 彼女は亮太の孤独な姿をなぜか心配でならなかった。
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| そんなある日・・・
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| 友人の松川琴美と伊藤小鳥といっしょに昼飯を食べていた。
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| 皆が家から持って来た弁当を食べている中、亮太はコンビニで買ったパンを手に教室から
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| 出て行った。
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姫野忍 | 「・・・(どうしていつも孤独なのかしら)」
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| 心の中で呟く忍。
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琴 美 | 「どうしたの姫?」
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小 鳥 | 「本当、さっきからぼうっとして・・・」
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姫野忍 | 「なんだかあの人いつも孤独だなあっと思って・・・」
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琴 美 | 「孤独?」
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姫野忍 | 「なんだか人と接するのを拒否しているみたいに見える」
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小 鳥 | 「一度も話した事が無い人なのにやけに気にかかるようね」
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琴 美 | 「本当」
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姫野忍 | 「・・・そだね、なんだか自分でも不思議」
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| そうこうしているうちに昼食時は過ぎ、亮太はクラスに戻ってくる。
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| そしてふたたびベランダの方を向きつづける。
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| 放課後・・・
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| 外は大雨となる。
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姫野忍 | 「あーどうしよう傘持ってこなかった・・・まっこ(あだ名)も、いとこ(あだ名)も部活
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| 終わらせて先に帰っちゃったし・・・」
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| 途方にくれる忍。
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??? | 「俺の傘に入らないかい」
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姫野忍 | 「え???」
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| そこには上級生の篠原と小坂がいた。
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篠 原 | 「俺と一緒に帰らないか?」
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小 坂 | 「兄貴の言うことは聞いた方がいいぜ」
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| やや脅迫を思わせるような口ぶりであったが、当の本人は単純に一緒に帰りたいだけであ
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| る。姫野忍は上級生からも憧れの的で、秘密裏に行っている校内女子人気投票でトップを
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| 記録したほどである。
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姫野忍 | 「え、ああ・・・」
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| しかし姫野忍にとってはこういうことは迷惑以外の苦痛でしかない。
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篠 原 | 「さあ」
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| 姫野は後ずさりする。
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| 一歩、半歩、三分の一歩と、
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姫野忍 | 「あ」
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| 忍は当たりに一人の少年を発見。咄嗟にその少年の方へと足を進める。
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| そして篠原と小坂に対して、
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姫野忍 | 「ご、ごめんなさい、あの人と帰る約束していたの、じゃあね・・・」
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| そそくさと少年の方へと去って行く。
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篠 原 | 「・・・・・・」
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小 坂 | 「逃げられましたね・・・」
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篠 原 | 「言うなああああ!!!!!」
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| 学校に雄叫びが轟く。
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| そして姫野忍が向かった少年はと言うと・・・・・・
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亮 太 | 「(暇だったなあ、今日も・・・なんで俺学校に行ってるんだろ・・・)」
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| 亮太は雨の中、文句を心の中で思い浮かべながら歩いていた。
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| そしていきなり姫野忍が傘の中へと入ってきた。
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姫野忍 | 「はあ、はあ、助かった・・・」
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亮 太 | 「・・・???」
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| 亮太は何が起きたかわからなかった。
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| いきなりクラスでも美人の部類に入る姫野忍が傘の中に入ってきたのである。
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亮 太 | 「あ、あの・・・」
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| 無理も無い、クラスに打ち解けないつもりでいた為、急な接近でやや動転していた。
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姫野忍 | 「おねがいです、しばらく一緒に歩いてくれますか」
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| 忍はそういうと亮太に寄り添いながら相々傘で学校を後にした。
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亮 太 | 「・・・もういいかな?」
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姫野忍 | 「あ、ごめんなさい、怖そうな上級生に誘われちゃって・・・」
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亮 太 | 「大変だな・・・」
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姫野忍 | 「はい・・・あ、すいません何時までも傘の中にいて」
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| 傘の外に出ようとする忍。
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亮 太 | 「今出たらびしょ濡れになるぞ、家まで送ってくよ」
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姫野忍 | 「あ、でもいいです、咄嗟の事とはいえこれ以上迷惑かけたくないですから」
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亮 太 | 「別に俺は気にして無いよ」
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| そういうと姫野忍を傘に引き寄せて家へと送る。
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| 姫野家に到着。ものすごい豪邸である・・・
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亮 太 | 「じゃあな・・・」
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姫野忍 | 「はい、ありがとうございます・・・あの聞きたい事があるんですがよろしいでしょうか?」
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亮 太 | 「なに?」
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姫野忍 | 「どうして私を家まで送ってくれたんですか?もしかして何か下心でも?」
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亮 太 | 「・・・・・・傘を持っていなかったから、ただそれだけだよ」
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姫野忍 | 「そうですか、あとこういうこと聞くのもなんですが、どうしていつも孤独なんですか?ク
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| ラスの人とまったく喋らないようですけど・・・なんでしたら私達が話相手になりますけ
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| ど・・・」
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亮 太 | 「・・・俺はただ人と接するのがなんとなく嫌なだけだよ」
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| そういうと亮太は傘を再びさし、帰路につく。
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姫野忍 | 「あの人、孤独の中に優しさを感じる・・・・・・だから私はあの人を気になりだしたのか
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| しら・・・」
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| そして・・・
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亮 太 | 「・・・・・・妙な雰囲気だったな・・・・・・」
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| 亮太は考え込む。
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亮 太 | 「まあいっか・・・」
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| 亮太は家に帰る。
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羽 美 | 「♪、♪、♪」
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| 羽美は楽しそうに料理を作っていた。
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羽 美 | 「あ、お帰りなさいお兄ちゃん」
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亮 太 | 「ただいま、て、何だこの焦げくさい臭いは・・・」
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羽 美 | 「!」
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| 案の定、カレーを作っていた鍋が真っ黒焦げになっていた。
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亮 太 | 「・・・・・・」
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羽 美 | 「・・・せっかく作ったのに・・・」
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| 涙目になる羽美。
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亮 太 | 「わーーーなくなあ、くえるよくえるよ・・・うぐぐぐぐぐ・・・バタ」
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| まるで漫画のような展開で亮太は羽美の手料理であえなく撃沈。
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| ご愁傷様・・・
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