ららら/漆拾話

己が使命

    それは彼女がまだ若いときの出来事であった。
    彼女は苦労に苦労を重ねて桂木一族の中で研究所を持つことが出来るまでに成長する。
    彼女の苦労は並大抵のものではなかった。
    桂木一族だからといって研究所を持つことが許されているのは二十四人に限定されている。
    毎年桂木一族の二十四の選出が決められ、あるものはRA製造資格権を得、あるものは強
    制的にRA研究を追われる。追われたからといってRAを研究できなくなるわけではない
    が、被験者となるものの提供を一切ストップさせられるのである。
    彼女は二十二歳になるまで候補に挙がりながらも資格を得るには至らなかった。彼女は必
    死に勉強した。そんな彼女の近くに一人の男がいた。彼はオルマの兄である。
    彼と彼女は幼い頃から幼馴染の同級生でずっと同じ学校に通っていた。しかし彼と彼女と
    の環境は太陽と月のように明暗を分けていた。
    彼女の家は昔から貧乏であったが、努力に努力に重ねて奨学金によって通うことが出来た。
    しかし彼の家は昔から大金持ち、しかも大して勉強もしていないのに学は上位にいた。
    彼女はそんな彼を羨むと同時に、憎くて憎くて仕方なかった。
    彼女は彼に負けないように必死に勉強をした。そして彼よりも先に二十四家の選出候補に
    も選ばれた。結局選出されなかったものの彼女は嬉しかった。彼よりも先に進んだことに
    嬉しくて嬉しくて仕方なかった。しかしそれも長くは続かなかった。その次の年は彼があ
    っさりと選出されたのである。
    彼は彼女と能力的には大差なかったが、彼の父のバックアップが影響を与えていたようで
    ある。
    彼女は嫉妬した。そして荒れた・・・。
    そしてある日、彼女は彼が新しく建てた研究所へ招待される。
聖 華「何だって私があいつの研究所に招かれなければいけないのよ・・・まったく・・・少しで
    も家に帰って次の選考会に備えなければいけないのに・・・」
オルマ「あ、お姉ちゃん来たんだ」
聖 華「久しぶりねオルマちゃん、元気にしていた」
オルマ「うん」
    オルマは聖華の手を掴む。
    そして聖華は妙な違和感を感じる。
聖 華「なに・・・あつ」
    聖華は火傷をしたような感じになった。
オルマ「オルマは火を出せるんだよ、ほら」
    そこには見たこともない白い炎がオルマの手のひらから生み出されていた。
聖 華「・・・いったいどういう子なのこの子は・・・」
オルマ「へへへ、あ、お兄ちゃん」
    そこにオルマの兄、桂木ルイマが登場。
ルイマ「こら、お客様に迷惑かけたらいけないぞ」
聖 華「・・・」
ルイマ「あ、これは失礼聖華さん」
聖 華「・・・(なんか馴れ馴れしいわねえ、やっぱり研究所を持つようになると、相手を気遣う
    ようになるのかしら)」
ルイマ「さあ、入ってください聖華さん」
聖 華「はい・・・(どーせ中にはお偉いさんや、桂木一族がいて、ちやほやしあうのかしらねえ)」
    ルイマと聖華は研究所の中に入る。
    そこには想像していた物とは全く違う、あちこち汚れまくっていた。
聖 華「なんでこんなに汚い研究所なの?」
ルイマ「いやあ〜完成して直ぐ大失敗やらかしてねえ、ハハハハハ」
聖 華「そうなの・・・(何やってるのよ)」
ルイマ「本当はもっと綺麗にしてから君を呼びたかったけど待ちきれなくてねえ」
聖 華「はあ?」
    そういえば研究所の中には私とルイマの他には誰もいない。
ルイマ「どうしたんだい?」
聖 華「他には誰もいないの?」
ルイマ「ああ、他の誰かと協力し合うのはちょっと苦手なんだ、だからほとんど一人でやってるよ」
聖 華「意外」
    意外だった、研究所を持って有頂天になっているかと思っていた。
ルイマ「今日読んだのは他でもない、君にお願いがあるんだ」
聖 華「何?」
ルイマ「僕と一緒に研究をしないか」
聖 華「・・・!!」
    いきなりの事に言葉が出なかった。
聖 華「そ、そんな・・・私は・・・あなたの事・・・」
ルイマ「知ってたよ」
聖 華「え?」
ルイマ「僕達幼馴染といっても、家の関係で君は僕に対して距離をとっていたこと」
聖 華「・・・」
ルイマ「そして君よりも先に二十四家に選ばれた、君は僕を恨んでいることも」
聖 華「それなら何故・・・」
ルイマ「それは・・・」
    聖華に近づくルイマ。
    あとづさる聖華。
ルイマ「ずっと君が好きだった・・・」
聖 華「!?」
ルイマ「僕は努力もしてなさそうに見えていただろうけど、ずっと君に負けないように裏で頑張り
    続けた。君よりも先に選ばれて、そして君に告白したかった」
聖 華「わ、私は・・・」
ルイマ「聖華さん」
    ルイマは聖華の肩を掴む。
ルイマ「聖華さん」
聖 華「ああ・・・」
    私はこの男をついさっきまで恨んでいたはず、それなのに抵抗しない自分。いや抵抗して
    いる筈、絶対にしている筈、でも力が入らない、どうして・・・
    なすがままにルイマと聖華は恋に落ちる。
    そして・・・
    服装を整える聖華。
    同じく服装を整えるルイマ。
ルイマ「・・・・・・」
聖 華「・・・・・・」
ルイマ「聖華・・・ごめん」
    その言葉を聴いた瞬間、今までの事が嘘の様に我に帰る。
聖 華「うう・・・」
    聖華はルイマの研究所から一目散に飛び出して行く。
    しかしその日からちょくちょくと聖華はルイマの研究所に訪れる様になる。
    またオルマとも暇があれば遊ぶようになった。
    今までの枷が外れたかのように・・・
    そして、次の選考会であっさりと聖華は二十四人に選出される。
    しかし、そんなことはもうどうでもよくなった、いまはただルイマとともに研究をしてい
    ることが充実の日々だった・・・。
    しかしある事件が二人を引き離すことになる。
    ゲイル・エターナル被験者実験にてルイマはゲイルに殺害される。
    聖華は今まで一度たりとも流さなかった涙を思いっきり流した。
    大切な時間をいとも簡単になくなったことの絶望感。
    その絶望感が彼女を変えた。
    ルイマを生き返らせるのは私だ・・・。
    しかしルイマの遺体はオルマの一族の手により厳重に保管され、自分が手を出すことが出
    来ない。
    他の誰にもいじらせる事が許せない。たとえルイマの妹のオルマであっても・・・
    彼女は協力するふりをしながらオルマからルイマを奪うために画策していた。
    そしてとうとうその日が来た。オルマを自分の手に落とし、それを操ることが出来ればル
    イマを奪うことが出来る。
聖 華「銀華、桂華、橋華、そしてオルマ、ようやくルイマを手に入れることが出来た・・・私の
    時間はあの時止まったままになった、でも今こそその針を動かさなくてはいけない」
    ルイマの遺体を前に喜びを隠せない聖華。
聖 華「ただ、あと一つ足りない、らららの大宝の力を持つF−MAXチップが・・・」
    そう、すべてはらららを倒さない限り始まらない・・・。
銀 華「そろそろお時間です、彼らも港町の裏山に集まっている頃でしょう」
    らららの命など問題ではない、ただ自分の為に行うことが生き甲斐。
聖 華「多分また大勢で来るでしょうからその時はあなた達の出番よ・・・」
    前回あっさり負けた三人だが、ある秘策を持っているようである。
    なぜならこの三人は三姉妹である。だから本来は連係プレーが十八番なのである。
聖 華「では行きましょうか・・・」

あとがき「ゲスト・桂木聖華」
ITK「やっぱり時を置いたほうが話を練れていいねえ」
聖 華「・・・」
ITK「どうしました聖華さん?」
聖 華「今回ちょっとやばいんじゃないんですか?」
ITK「なにが?」
聖 華「あの、その私とルイマとの・・・」
ITK「何があったかは想像にお任せです」
聖 華「でも実際には・・・」
ITK「そーぞーにおまかせ!!!(強調)」
聖 華「・・・」

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