美紗緒日記/拾弐話

生命無用

    数日後、とある病院の一室にて一人の少女が眠っていた。
留魅耶「姉さん美紗緒はいったいどうなるの・・・」
裸魅亜「自分が持つ生命力を糧にすべてに近いエネルギーを放出して昏睡状態よ」
    先日、美紗緒のもう一つの人格が暴走して一つの街を壊滅的崩壊させ軍隊まで出撃する始
    末。そしてエネルギーを使い果たした美紗緒を留魅耶と裸魅亜が密かに閉鎖されていた病
    院にまで運んでいき、治療を施す。
留魅耶「あれから美紗緒はまったく目を覚まさない・・・」
裸魅亜「これはもう助からないかもしれないわ・・・」
留魅耶「そんな・・・姉さんなんとかしてよ!」
裸魅亜「・・・・・・」
留魅耶「姉さん・・・」
裸魅亜「姉さんはちょっと用があるからあんたはここにいてね」
    裸魅亜は病室から去っていく。
留魅耶「美紗緒、目を覚ましてよ・・・美紗緒、美紗緒・・・」
    留魅耶の問いかけもむなしく美紗緒の目は開くことはなかった。
    その間軍隊は各地を一斉捜索に乗り出し各住民に情報をつのり始めた。
    病室にあったテレビでも先日の出来事が連日のように報道され続ける。
    そんなある夜、美紗緒は目を覚ました。
美紗緒「ん、ん・・・」
    美紗緒は辺りを見回した。ベットの所に眠りこけた留魅耶がいた。
美紗緒「わたし・・・いったい・・・」
Vミサ「あんたは私の意思のもとに町を破壊したのさ」
美紗緒「だ、だれ・・・」
Vミサ「あんたのもう一つの人格さ」
美紗緒「もう一つの人格?」
Vミサ「そう、久しぶりに外に出られて満喫できたよ」
美紗緒「???」
Vミサ「そして今やあたし達は警察とかに追われる身になったのさ」
美紗緒「ど、どういうこと」
Vミサ「めんどくさい奴だなあ、今その記憶を見せてあげるよ」
    Vミサがそういった瞬間、美紗緒の脳裏に光が走りVミサがおこなったことが描き出され
    た。そして美紗緒はすべてを理解した。
美紗緒「・・・・・・」
Vミサ「わかったかい?」
美紗緒「こんなことして楽しい・・・」
Vミサ「ああ楽しいねえ。破壊を尽くすことが私の生き甲斐だからねえ」
美紗緒「楽しくないよ・・・」
Vミサ「なんだって?」
美紗緒「楽しくない・・・楽しくない・・・こんなこと楽しくない!!」
Vミサ「叫んだって無駄だね。あたしはもうあんたといつでも入れ替わることができるんだからね
    え」
美紗緒「・・・そんなことさせない」
    美紗緒は横の机にあった果物ナイフを握った。
Vミサ「な、なにをするきよ・・・」
美紗緒「今ここで私が死ねばあなたも死ぬ・・・」
Vミサ「ば、馬鹿な真似はやめろ・・・」
美紗緒「ごめんねみんな・・・」
Vミサ「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!」
    美紗緒は果物ナイフを自分の胸に突き刺した。
美紗緒「ううぅぅ・・・」
Vミサ「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
    Vミサは美紗緒の精神の中で断末魔をあげた。
    そんなとき留魅耶は目を覚まし、美紗緒が自分の胸に果物ナイフを突き刺している現状を
    目の当たりにした。
留魅耶「な、何やってるんだ美紗緒・・・」
美紗緒「る、るーくん・・・」
留魅耶「なんで、なんで・・・」
美紗緒「私いけないことしてたんだね・・・みんなに迷惑かけて・・・そしてるーくんにも・・・」
留魅耶「美紗緒!!」
美紗緒「さ・・よ・・な・・・・・・・・・・・」
    美紗緒の体は生命活動をおこなうことをやめた。
留魅耶「み、美紗緒ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
    その夜、留魅耶は一晩中泣きじゃくった。
    次の日、一連の事故は謎のままに終結。軍隊は引き上げていった。
    そして留魅耶と裸魅亜は美紗緒の母に美紗緒は事故で死んだとつげる。
    美紗緒の母はそのことをつげられてその場で即倒した。
    その夜は美紗緒のお通夜となる。
    参拝者の中に天地の姿があった。
天 地「どうもこのたびは・・・」
琴 恵「わざわざ岡山からご足労を・・・・・・」
天 地「御焼香させていただきます・・・」
    天地は台にある焼香を前に悲しみに落ちる。
天 地「なんで美紗緒ちゃんが・・・・・・」
鷲 羽「大変ねえまったく」
天 地「わ、鷲羽さんも来ていたんですか?」
鷲 羽「ま、ちょっと気になることがあってね」
天 地「気になること?」
鷲 羽「ちょっと夜も寝静まったときまで待ってね」
天 地「はあ・・・」
琴 恵「???」
    寝静まった夜。
天 地「あの〜鷲羽さん?」
鷲 羽「なによ?」
天 地「気になることっていうのは?」
鷲 羽「実はねえ、この美紗緒ってこはまだかすかに生命を感じるのよ」
天 地「えっ?」
砂沙美「本当なの鷲羽さん?」
天 地「おわっ、いつの間に砂沙美ちゃん」
砂沙美「十八行前からいたよ、台詞はなかったけど」
天 地「そんなベタなオチでいいの・・・」
鷲 羽「いいんじゃないの」
天 地「はあ〜」
    天地のため息をよそに鷲羽はおもむろに謎めいた装置を取り出した。
鷲 羽「鷲羽ちゃん特製YM式深層心理介入装置よ」
天 地「で、この装置でどうするんですか?」
鷲 羽「なんとか美紗緒ちゃんを生き返らせるのよ」
砂沙美「生き返るの美紗緒ちゃん?」
鷲 羽「二人が美紗緒ちゃんの深層心理に潜り込んでなんとか生へ執着させるのよ」
天 地「よく分かんないけどわかりました」
砂沙美「鷲羽さん早く」
鷲 羽「わかったわかった、でもタイムリミットは遺体が焼却炉に運ばれるまでだからね」
砂沙美「うん・・・・・・」
    二人は鷲羽の装置によって美紗緒の深層心理に潜り込んだ。
    二人が潜り込む数時間前、美紗緒は心の奥底に潜んでいた。
    心の奥底で何も受け付けようとしない殻の中で・・・
    そんなときもう一つの美紗緒の人格が美紗緒に問いかけ始めた。その名はピクシィミサ。
Pミサ「いつまでそんな殻に閉じこもっているのよ」
美紗緒「・・・・・・」
Pミサ「別にあなた自身がやったわけじゃないんだから」
美紗緒「でも、もういや・・・こんなこと・・・」
Pミサ「Vミサはもう消滅したんだし、事故も謎のままになったから、いつも通り過ごせばいいじ
    ゃないの」
美紗緒「・・・私はもう生きていきたくない・・・みんなに迷惑ばかりかけて・・・」
Pミサ「いい加減にしなさいよ、そんなこと言っていたら本当に死んでしまうのよ、あなただけで
    なく私も」
美紗緒「そ、そんな・・・」
Pミサ「さあ早いところその殻を打ち破っちゃいなさいよ」
美紗緒「う、うん・・・」
    美紗緒は精神の殻を打ち破ろうとした、しかし
美紗緒「あ、あれ・・・」
Pミサ「どうしたのよ」
美紗緒「殻が破れない・・・」
Pミサ「どれどれ・・・とりゃーーーー!!!」
    カチン
Pミサ「びくともしないわねえ・・・まさかこのまま・・・」
    ドンドン
美紗緒「やぶれない、どうして、やぶれない・・・」
Pミサ「もしかして美紗緒の生命が足りないから・・・・・・」
美紗緒「わたしまだ・・・いきたい・・・・・・」
Pミサ「・・・・・・」
    美紗緒は何度も殻に拳をたたきつけるも、ひび一つできない。
美紗緒「はあー、はあー、うちやぶれない・・・」
Pミサ「美紗緒・・・」
砂沙美「美紗緒ちゃーんどこ?」
天 地「美紗緒ちゃん、どこにいるんだ?」
Pミサ「おお、グッドタイミング!」
砂沙美「あなたは・・・」
Pミサ「そんなことどうでもいいから、この殻を打ち破るのに協力してくれない」
天 地「ああ、美紗緒ちゃん」
美紗緒「さ、砂沙美ちゃん、それに天地さんも・・・」
天 地「今このから殻救ってあげるよ・・・」
    天地は右手から光鷹翼を生み出し、そして光鷹翼を変化させて光鷹剣を生み出す。
砂沙美「天地兄ちゃん頑張って」
天 地「美紗緒ちゃん、ちょっと隅に寄っていてね」
美紗緒「う、うん」
天 地「とりゃーーーーーー!!!」
    ズバン、パリーーン
    殻はものの見事に真っ二つになり、そして殻は静かに消滅。
美紗緒「殻を打ち破った・・・」
    美紗緒は殻があったところから思いっきりこちらに向かってきた。
    大粒の涙をこぼしながら・・・
砂沙美「美紗緒ちゃーん」
    手を広げて待つ砂沙美。
    しかし美紗緒は砂沙美を通り過ぎて天地に抱きつく。
美紗緒「天地さーん、ありがとう・・・」
天 地「あはは・・・」
砂沙美「美紗緒ちゃんのバカ・・・」
Pミサ「あらあらみせつけちゃって・・・」
砂沙美「美紗緒ちゃん、天地兄ちゃんは砂沙美のものだよ」
美紗緒「くすん、砂沙美ちゃん、負けないから・・・」
砂沙美「いったな〜」
美紗緒「いったよ〜」
砂・美「あはははははははははは」
天 地「・・・」
Pミサ「モテモテねえ、天地ボーイ、10年後が楽しみねえ」
天 地「ちょっちょっと・・・」
    ガラガラガラガラガラ
天 地「なんだ」
Pミサ「美紗緒の体が運ばれ始めたのよ・・・」
砂沙美「早く脱出しなきゃ・・・」
天 地「いこうみんな」
    天地達は出口へと走っていった。ピクシィミサをのぞいて・・・
天 地「何やってるんだ、君も早く」
Pミサ「私は美紗緒が生き返る代償に消滅するのよ・・・あのとき美紗緒が自分で命を絶ったとき
    私の命だけはのこった・・・つまり美紗緒を生き返らせるには私の命が必要なのよ」
美紗緒「ピクシィミサ・・・」
Pミサ「じゃあ〜ねえ」
    美紗緒の精神は大きく揺らぎ、ピクシィミサは徐々に消えていく。
美紗緒「ミサ、ありがとう!」
Pミサ「ばいばい」
天 地「さあ早く脱出するんだ!」
砂・美「うん」
    ガラガラガラガラガラ・・・シュイーーーン
    一方現実世界では・・・
坊 主「ええ、これより根性のお別れをいたしますので、最後にご対面を・・・」
琴 恵「うううぅぅぅぅぅ美紗緒・・・」
美紗緒「・・・・・・ん」
琴 恵「え・・・・・・」
美紗緒「・・・お・かあ・さん」
琴 恵「み、美紗緒!!」
坊 主「ひぃぃぃぃ死人が生き返った!!!」
美紗緒「お母さん」
琴 恵「美紗緒」
    時間ぎりぎりに生き返った美紗緒、そしてその美紗緒を目の当たりにして涙がどっとあふ
    れる母琴恵。いつまでも抱き合う親子・・・・・・。
    その様子を物陰で見ていた天地と砂沙美と鷲羽。
砂沙美「よかった美紗緒ちゃん・・・」
鷲 羽「間一髪よあんた達・・・」
天 地「来たかいがありましたね・・・」
鷲 羽「じゃあ岡山に帰ろうね」
砂沙美「うん」
天 地「先に帰ってて下さい、俺ちょっと話をしてきます」
砂沙美「ああ、それなら砂沙美も・・・ふがふが」
鷲 羽「天地殿、砂沙美ちゃんと一緒に先帰ってるね」 
砂沙美「ふがふが」
天 地「じゃあ・・・」
    さらに別の物陰にて・・・
裸魅亜「あらら生き返ったみたいねえ、どうしたの留魅耶?」
留魅耶「あのときどこかへ行くっていったのはこういうことだったの?」
裸魅亜「そういうこと」
留魅耶「はははは、姉さん帰ろう」
裸魅亜「あら?美紗緒に会わないの?」
留魅耶「いいよ、美紗緒にはぼくより好きな人と会いたいだろうから・・・」
裸魅亜「留魅耶・・・」
    それぞれの思惑をよそにその夜。
美紗緒「天地さん、私生き返ったんですよねえ」
天 地「その言葉何回目かなあ・・・」
美紗緒「だって嬉しいんだもの・・・」
天 地「そうだねえ」
美紗緒「天地さんはこれからどうするの?」
天 地「また岡山でいつもの生活が待っていると思う」
美紗緒「・・・はははは」
天 地「あ、もうこんな時間、最終の電車にのらなきゃいけないから」
    天地が去ろうとしたとき美紗緒は天地の背中に寄り添った。
美紗緒「天地さん・・・」
天 地「み、美紗緒ちゃん・・・」
美紗緒「私やっぱり天地さんのことが忘れられません・・・」
天 地「み、美紗緒ちゃん(ドキドキ)」
美紗緒「一緒に連れていって、岡山に・・・・・・」
天 地「美紗緒ちゃん・・・」
    天地は美紗緒の肩にさわる
天 地「だめだ、美紗緒ちゃんのお母さんを一人にしちゃ駄目だよ」
美紗緒「・・・そうですよね・・・無理ですよね」
天 地「ごめんね」
美紗緒「ううん、いいんです、天地さんに無理いって・・・」
天 地「わかってくれた・・・じゃあ電車の時間だから」
美紗緒「さよなら」
天 地「さよなら」
    天地が美紗緒からしばらく離れたときに美紗緒は大きな声で叫んだ。
美紗緒「ありがとう天地さん。いつかまた会いに行きます」
天 地「・・・・・・さようなら美紗緒ちゃん」
    天地は去っていった。
美紗緒「砂沙美ちゃんとは、その時は・・・」
    いつもつけていた日記は再び文字でうまり始めた。
    そしてその日の日記の最後のページにこう書かれていた。
日 記『ありがとう、みんな』

あとがき「ゲスト・美紗緒」
ITK「いえ〜い、やっと美紗緒日記完結。しかも今までの小説の倍以上の行数で・・・(従来の
    場合六話分くらい)」
美紗緒「なにかものすごい展開ですねえ・・・」
ITK「さすがに今回は疲れました」
美紗緒「しぶといところで今回ピクシィミサが登場しましたね」
ITK「当初からなんらかの形で出したかったので・・・」
美紗緒「本家とかなり性格が違うような・・・」
ITK「ま、かく人それぞれです」
美紗緒「でもこれから小説はどうなるんですか?」
ITK「現時点では外伝以外書く予定無し」
美紗緒「ということは美紗緒の出番はもう終わり?」
ITK「わかんない。外伝はその時その時の気分次第で書いてますから」
美紗緒「それにしても、長い間美紗緒日記を読んで頂いた方有り難う御座います」
ITK「またあう日まで・・・(本当は三月末に書きたかったんだけどね)」
美紗緒「またそんな余計なひとことを・・・」

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